トルトゥリエによるバッハの無伴奏チェロ組曲(1982)

好感度 ■■■■■
1983年のセッション録音。
トルトゥリエは1914年生まれのフランスのチェロ奏者。1990年に76歳で亡くなった。
この録音当時は69歳。
彼は1960年にも同曲集をセッション録音している。
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もたつくほどではないけれど、悠然とした足取りはいささかまだるっこしい。技術的には盛りを過ぎているように感じられる。
演奏者の自己顕示のようなものは感じられず、曲調を素直に描き出すことに徹している印象。
キレは乏しく無骨だけど、息遣いの使い分けは雄弁で、個々の楽曲の味わいを実直に引き出している。
自然体の良さがある。
悠然としたテンポのせいか、(チェロの演奏にありがちな)音を整えるためのタメとかリズムの揺動とかが目立たない。おかげで、造形は整っているし、演奏者のクセが気になりにくい。
素朴なタッチだけど、この組曲集の豊かさを味わえる音源という意味では、なかなか優れ物と感じられる。
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骨太だけど、粘っこさとか重苦しさがなく、もたれない。
全体の佇まいとして、落ち着きや風格と、軽やかな解放感が、自然に両立している。この風情が独特。
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