アルバン・ベルク四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲第15番

好感度 ■■■■■
1983年のセッション録音。1回めの全集から。
同四重奏団は、1回めの全集を1978〜1983年に、2回めの全集を1989年に録音(後者はライブ録音)。
アルバン・ベルク四重奏団は、オーストリアのウィーンの拠点を置き、1970〜2008年まで活動した。
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造形は引き締まっていて、颯爽とした足取り。
タメとかゆらぎとかは必要最小限と言うか、必要最小限未満かも。
呼吸は浅めだけど、細かくコントロールされていて、せかせかした印象や単調さはない。
キレがあってダイナミック。緩急の変化が少ないかわりに、音量の強弱の幅はけっこう大きい。総体的には、十分にドラマティックな仕上がり。
一方、音色は艷やかでしっとりとした美音。そして、4つのパートのブレンド具合は絶妙。4人が対話するというより、一体となって響きを織り上げていく風情。
第一ヴァイオリンが表現の核となって、全体を主導している。雄弁で華々しい。
他のパートは、それを支える感じ。ただし、他のパートが消極的ということではなく、あくまでも連携のあり方。
響きの面でも、高音成分がわりと強めのバランス。そのせいか、ひんやりとした感触が終始つきまとう。
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作曲者の意図より、自分たちのセンスとか流儀を優先している。
楽曲ありきと言うより、演奏者のコンセプトありきの演奏。楽曲を料理しようという目線のアプローチ。
と言っても、彼らの演奏スタイルは、それなりに懐が広くて練られている。恣意的だとか強引と片付けられるほど偏狭ではない。
何よりも、彼らの演奏スタイルは、ちょっとかっこいい。
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この音源で、全曲中最も個性的なのが、全曲の中核である第三楽章。15分強という快速の演奏。
といっても、テンポが速いというより、タメを最小限に切り詰めて、フレーズを次々と繰り出してくる感じ。
穏やかに浸るには向かいないかもしれないが、淀みはなく、い回しはしなやかでニュアンス豊か。一体となったアンサンブルが精妙に色合いを変化させる。
作曲者が与えた「病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」というタイトルにはそぐわないかもしれないが、美しく洗練されていて高品位。
終楽章は、このグループのキレと美音が、曲の持ち味と気持ちよくシンクロ。
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