ブダペスト四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲第15番(1961)

好感度 ■■■■■
1961年のセッション録音。全集から
このグループは、ハンガリーで1917年に結成され、1938年から米国に拠点を移し、1967年まで活動した。
ちなみに、この録音の頃には、メンバー全員旧ソ連出身者だったらしい。
1951~1952年にモノラルで、1958~1961年にステレオで、2回全曲録音している。
潤いが乏しい初期のステレオ録音。再生する環境によっては、響きにザラつきを感じるかもしれない。
それでも、十分に鮮明で、奏者たちのやっていることはつぶさに伝わってくる。
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録音当時、メンバーはいずれも60歳前後。50年代初頭の旧全集と比べると、キレは後退しているように感じる。
もっとも、旧全集は、平均以上に引き締まった演奏だったから、少し緩んだ新全集の方がむしろ標準的に聴こえなくもない。
この音源単体で聴けば、クォリティは必要十分と感じられる。特にコンビネーションはうまくて的確。
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味付けとか演出で聴かせるのではなく、スコアに記された音符をあいまいさなく浮き上がらせ、もっばら緊密なコンビネーションで聴かせる。
4つのパートはほぼ均等に聴こえる。ただし、場面ごとにバランスを小刻みに変化させて、表情を明確に打ち出す。メリハリがハッキリしていて、何気なく気分に流れることがない。
そして、メリハリの強さを除けば、個々の表情とかつながりは自然だし、よく練られている。
おかげで、明快であるのと同じくらいに分かりやすい。これがどういう音楽なのかを、過不足無く教えてくれる。
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全曲の頂点である第三楽章も、気負いを感じさせず知的にさばいているけれど、息遣いとか4パートの連携とか、細かいところまで的確に決める。
聴いていて、特別な気分になるほどではないけれど、聴き応えはあるし納得できる。
わたしの知る範囲では、世界を股にかけて活動する弦楽四重奏団の中でも、このレベルで仕上げられるグループは少ないと思う。
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