フルトヴェングラーによるブルックナー交響曲第5番(1942)

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。

1942年のライブ録音。

フルトヴェングラーの同曲の録音としては、他にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのライブ録音(1951年)がある。

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力がみなぎった、豪胆な演奏。
もっとも、力押しではない。全体通して、しなやかで抑揚の豊かなヴァイオリンの歌いっぷりは心地よく、硬軟織り交ぜている。

それぞれの楽章の中で、テンポの伸縮の幅が大きい。とは言え、テンポの基本設定のようなものはある。第3楽章はわりと速い。その他の3つの楽章は、速からず遅からず。

大胆な加減速だけど、楽曲の展開を踏まえているので、違和感はない。また、指揮者の計算とオーケストラとの共通認識の上での大胆なふるまいのようで、危なげない。
加速は畳みかけるようだけど、減速はさほど極端ではなく、全体としては引き締まって聴こえる。

ただし、終楽章は、他の楽章より腰を据えて、曲の多様な表情をじっくりと浮かび上がらせている。

クライマックスでは激しい追い込みを聴かせる。特に、コーダに突入する直前の急加速や、しめくくりでのティンパニの轟音は、この指揮者らしいケレン。

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フルトヴェングラーのライブ録音にありがちな、特有の"誇張芸"が発揮されている。
計算されたテンポの加減速も一種の誇張だし、落ち着いた場面は弦群が主導し、盛り上がってくると大きな音を出すパートを前面に出す音響バランスの操作も誇張。

楽曲の生理を踏まえた誇張なので、違和感はないし、曲の展開はわかりやすくなっている。そういう意味ではよくできた芸風。

とは言え、しばしば内声部が覆われてしまい、響きのニュアンスから立体感とか多彩さが喪われ、音楽が直線的になる。

単調というほどではないものの、ある程度この曲を知っていて、曲の書法を味わいたい聴き手には、どこか大味に聴こえてしまいそう。

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