ナッシュ・アンサンブルによるブラームスの弦楽五重奏曲第2番

ナッシュ・アンサンブルは、ロンドンにあるウィグモア・ホールを活動拠点とする、室内楽アンサンブルらしい。メンバーは11人(この記事作成時点)で、ピアニストやハープ奏者なんかも含まれている。
もちろん、この録音に参加しているのは、弦のメンバーだけ。
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線の一つ一つを明確にして、それらが親密に絡み合う。サウンドバランスは、低音やや浅めのスッキリ系。混濁感の無いクリアな響きのためのバランスなのだろう。
精度の高いアンサンブルだけど、静的に演奏して、隙なく仕上げていくという方向性ではない。各奏者が積極的に表現しながら、まとまりを作っていく感じで、好ましい。
アンサンブル全体として、呼吸感があって、リズムには生気がある。精度を一定以上に保ちつつ、生き生きとして、スケール豊かな表現を展開している。
静と動の変化を入念に際立たせて、それぞれの楽章を彫りの深く描き上げている。こちらの曲に対するイメージより、各楽章が立派で格調高く響くような気がする。
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ただ、第一楽章はもう一息だろうか。
これだけのポテンシャルがある団体なので、もう少しテンションを下げて安全運転をしたら、完成度はさらに上がったと思う。
しかし、ここでのナッシュ・アンサンブルは、活気と流動感を前面に出す道を選んでいる。作品の解釈としては、賛辞を贈りたいけれど、勢いの反面、細やかなコンビネーションの妙味は後退している。
そういうところが、この曲では大事なので、残念なところ。
第二楽章以降は、洗練されたスマートな質感に違和感を感じる向きがあるかもしれない。ただ、晩年のブラームスの書法がいかに洗練されたものであるかを、実感できる。
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