アルゲリッチによるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番

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アルゲリッチのピアノは、指の運動能力は凄まじいけれど、打鍵は中軽量級。
音の粒立ちを重視して、音のダブつきを排除しているせいもあるのだろうけど、響きの量感は薄い。
スリリングだけど、パワフルという印象ではない。
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畳みかけるテンポ感と多彩なニュアンスがあいまって、一つ一つのフレーズを、音の線的な連なりというより、響きの揺らぎとかきらめきのように表現している。
そのために、他の演奏とは違う曲のように聴こえる。ピアノを語るように演奏している。
超絶の指さばきが、音楽的な持ち味と不可分に結びついていて、演奏様式としての次元の高さを感じる。
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ライブ録音とは言え、燃え上がるような演奏ではない。集中して的確に指先をコントロールして、自分の表現を着実に展開している。
こういう演奏様式だと、ミスタッチを恐れず、天衣無縫にやってくれた方が、より面白くなりそうだけど、難曲の正規録音だから、そうもいかないのだろうか。
全曲通して非凡ではあるけれど、アルゲリッチの持ち味をもっとも好ましく感じたのは第2楽章。
残る2つの楽章も見事だけど、打鍵の軽さのせいで、凄みのようなものは感じられない。
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この協奏曲は管弦楽が厚め。わきまえない指揮者だと、アルゲリッチの細やかな表現を邪魔しないか心配になるけれど、シャイーは危なげない。
明朗でやや甘い響きは、アルゲリッチのピアノとは好対照。でも、ピアノをエスコートしつつ、マイルドで優美なトーンを加味していて、なかなかいい感じ。
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