ベームとロンドン交響楽団によるブラームス交響曲第2番

ベームは、正攻法で明解な質の音楽をやる人だと思う。音に対する鋭い感覚があって、素朴という形容はしっくりしないけれど、凝ったことをやる人ではない、という印象。
ただ、オーケストラの持ち味を引き出す技は長けていたように思う。というか、こねくり回さないスタイルだからこそ、オーケストラの持ち味を映し込みやすいのかもしれない。
彼は大量のレコーディングを残していて、ちゃんと数えたことはないけれど、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との協演が多いような気がする。
そのごく一部しか知らないけれど、積極的に名門オーケストラの持ち味を引き出すベームの演奏には、面白みを感じらない。
少なくとも、ベームの芸風が鮮明に表れているようには聴こえない。
そういう意味で、ロンドン交響楽団との組み合わせは興味深い。そこそこ縁のあるオーケストラのようだし。
ただ、1973年の演奏というのが気がかり。70年代のベームの演奏は、序盤のいくつかを除いて、好みではないから。
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演奏のスタイルとしては、1970年代のベームらしく、悠然としている。モタモタしたところ、緩んだところはないけれど、かと言って締まりのようなものも感じ取りにくい。
やはり好みからは少し外れるけれど、老巨匠風の演奏としては上級の仕上がり。自然体風で、刺激的な要素は乏しいけれど、「これまでいろいろ試してみたけれど、こうやるのが一番しっくりくるよね」的な妙味が全編にある。
ロンドン交響楽団に味わい的なものはないけれど、明解でありながら各パートが親密に連動するアンサンブルは気持ちいい。
むしろ、こういうオーケストラの持ち味だからこそ、ベームその人の芸が分かりやすく具現化されているような。
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