フルニエ、シェルヘンによるドヴォルザークのチェロ協奏曲

モノラルだけど、明瞭で聴きやすい。。
ちなみにフルニエは、この1年前に、セル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と、同曲をセッション録音している。
::::::::::
フルニエの独奏に限ると、聴いたことのある彼の録音の中では(たぶん4つくらい)、もっとも好印象。
この人は、"チェロの貴公子"と呼ばれたくらい、品の良い演奏スタイルだけど、かと言って情緒的な要素を削いでしまうことはない。
フレージングとかリズムの刻みとかは、端正だけど、響きの作り方はけっこう多彩で、味がある。
おそろく、そうしたバランス感覚の絶妙さが、この人の魅力だと思う。
この音源では、フルニエのそういう良さを満喫できる。生演奏とは言え、技巧は安定しているし、程良い熱気が加味されている。
そして、シェルヘンとの組み合わせが奏功している。
::::::::::
チェロという楽器は、音色は渋いし音量も控えめ。オーケストラと協演すると、とかく埋もれがち。
フルニエの音源に限らず、あるいは最新の音源であっても、厚ぼったい管弦楽にストレスを覚えることがしばしばある。
その点、シェルヘンの伴奏は、程良い。
乾いた張りのある響きで、力感みなぎる管弦楽だけど、弦のボリュームを薄くして、内声部を際立たせるサウンドバランス。
管弦楽の全体の響きは薄くなるけれど、その分フルニエのやっていることは明瞭に聴こえる。
オーケストラの響きは薄目だけど、音楽としてはけっこう雄弁。盛り上がる箇所では、金管を前に出して刺激的な表情を作るけれど、押すときと引くタイミングを心得ていて、ソリストが活躍する場面では、しっかりとサポート。
オーケストラの各パートを、ソリストに巧みに絡ませる手並みに、うまさを感じる。
個人的に、シェルヘンの作り出す乾いたサウンドは、好みではないけれど、うるおい成分はフルニエのチェロが補っていて、協演として好ましく聴いた。
コメント
コメントを投稿