マゼールによるサン=サーンス交響曲第3番『オルガン付』

ロリン・マゼール指揮ピッツバーグ交響楽団。
1993~96年のセッション録音。
ちなみに、オーケストラの演奏は1993年に録音され、オルガンのパートのみ1996年に録音されている。

マゼールは、同オーケストラの音楽監督を、1988~96年に勤めた。その時期の録音。
なお、マゼールは、かつてヴァイオリン奏者としてこのオーケストラに在籍したことがあるらしい。

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作品の描き方としては、最後の最後で音を長く引っぱる以外は素直。

ゆとりあるテンポ。オーケストラの音の出し方は軽くて、カラッと明るい。重量感とか艶とか陰影めいたものは乏しいけれど、気持ちよく広がって、スケール感はそれなりにある。

アンサンブルは細やかでクリア。肌理が細かく流暢。スムーズだけど、適度にディテールがきらめいて、心地良い。
ホールの音響は豊かだけど、そういうことを踏まえてコントロールされているから、サウンドイメージは明瞭。

この指揮者のセンスの良さ、うまさ、統率力の高さが表れている。
また、オーケストラは、固有の味わいみたいなものは乏しいけれど、十分にうまい。

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機能美とか音響としての心地よさはあるけれど、音のドラマとしての手ごたえは薄い。
オーケストラのカラッとしたトーンも影響しているだろうけど、最大の要因はマゼールにありそう。

マゼールのフレーズの扱いは、滑らかさとか明瞭さをことのほか重視し、その反面、"歌"を感じさせない。いわゆる感情表現のようなものは希薄。

この交響曲は、そんなに込み入った感情表現を要求する曲ではないけれど、陰から陽へという仕掛けはある。
良くも悪くも、この演奏は、そういったものを意識させない。音によるドラマみたいなものを期待すると、すかされてしまう。

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