マルティノンによるサン=サーンス交響曲第3番『オルガン付』(1975)
ジャン・マルティノン指揮、フランス国立管弦楽団。1975年のセッション録音。
全集から。
マルティノンは、1970年にも同じオーケストラ(ただし名称はフランス国立放送管弦楽団)と正規録音している。ただし、オルガン奏者は異なる。
録音時期が5年しか空いていないので、どうしても比較してしまう。
同じ指揮者とオーケストラと知って聴けば、共通点は多い。でも、相違点もあるから、別のフランス人指揮者と言われたら、真に受けるかもしれない。そのくらいは違っている。
と言っても、大きい違いではないから、マルティノンの作品の捉え方が変わったというより、録音に臨む姿勢とか心境の差異という印象。
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1970年録音のERATO盤が自然体風だったのに対して、こちらの音源では、けっこう表現を作り込んでいる。
造形は堅牢で平明。堂々として厚みがある。クリアな響きを配慮しつつ、線がクッキリとした、張りのある音の出し方。
場面ごとの表情の付け方は、その推移を聴き手に意識させるように、メリハリが強い。
と言っても、楽曲を自分の色に染めるというより、己の表現力をフルに発揮して、作曲者の意図を表出し尽くそう、という感じ。奇抜なところはない。
いずれにしても、本場の指揮者とオーケストラに期待されるような、 特別な味わいは乏しい。かろうじて、明るめの開放的なサウンドくらいか。
あくまでも、交響曲としての構成とか書法を歪みなく明解に描き出すというのが、マルティノンの立ち位置のようだ。
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マルティノンという指揮者の表現力を堪能する、という意味では、1970年のERATO盤より、 こちらの録音だろう。こだわりや工夫がすみずみまで行き渡っている。
そして、風格を感じさせるのもこちらの方。
ただし、ERATO盤のストレートさを、より好ましく感じるとしても、不思議ではない。
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