バーンスタインによるサン=サーンス交響曲第3番『オルガン付』
レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏。1976年のセッション録音。
ハーンスタインは、1958~1969年の間、同オーケストラの音楽監督を務めた。
これは退任後の、バーンスタインが欧州での活動を活発化させていた頃の録音。
ちなみに、この時期の音楽監督はブーレーズ。
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体感上のテンポも、演奏時間からしても、ゆっくりとした足取り。
ハーンスタインは、すべてのパートを個別に際立たせて、それぞれに生々しく粘っこい表現を要求している。
パート間の主従関係を明確にして、場面ごとに明確なトーンをもたらす指揮に比べると、作品書法の多様性が、密度高く描き出される。
特に、ここでは入念な手つきなので、濃密に感じられる。ゆっくりした足取りは、彼の流儀を徹底した結果の、自然の成り行きだろう。
いずれにしても、この交響曲の表現としては、異色な味わい。
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バーンスタインのやり方のデメリットは鈍色のサウンド。個々のパートの響きが常にむき出しで、オーケストラ全体としての色調の変化は乏しい。
演奏技術の拙さによるものではなく(むしろ、この演奏の技術レベルは高い)、バーンスタインの演奏スタイルの副作用だろう。
いずれにしろ、音楽の展開を、響きのトーンの遷移として描き分けられないのは、辛いところ。
たとえば、静謐感が漂うはず(?)の第一楽章後半でも、濁りと息苦しさが 終始付きまとっている。
第二楽章の前半から後半への移行部でも、光明が差し込んでくるような気分を味わえない。
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