小澤征爾によるサン=サーンス交響曲第3番『オルガン付』

小澤征爾指揮、フランス国立管弦楽団。
1985~86年のセッション録音。

オルガンは別録りしたものを、合成したらしい。

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結論から言うと、期待外れ。

とりあえず録音のクォリティが残念。大浴場のような音響。
同時期に、他のメジャー・レーベルが、この交響曲の好録音を世に送り出していたことを考えると、演奏者に同情したくなるような出来栄え。

 唯一のとりえは、フォーカスが甘いせいで、オーケストラとオルガンの合成の痕跡がマスクされている点かと。

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量感はほどほどだけど、広がりのあるサウンド。柔らかく広がる響きの中で、軽快かつキレのあるアンサンブルが繰り広げられている。

しなやかで機能的。粘り気とか歪みを感じさせない、清潔なフレージング。
弦の音量を絞り気味にして、細かな音の動きまで、浮かび上がらせようとしている。
 第二楽章前半などは、他の演奏では聴き流してしまいそうな、細かな音が印象的に浮き彫りにされていて、指揮者の確かなハンドリングを感じる。

ただ、録音がそれらをとらえきれていない。こちらが耳をそばだてないと、演奏者の芸が伝わってこない。

この曲を楽しむために、何気なく聴くなら、それなりに楽しめるかもしれない。
しかし、録音時期の近い競合盤の存在を考えると、失望が大きい。

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オーケストラ、演奏会場、オルガンとその奏者と、指揮者以外はフランス尽くしの音源。本場の味わいを記録することに、軸足が置かれていたのかもしれない。

小澤の清潔感(?)のある演奏スタイルは、それ自体がフランス風とは感じないけれど、もろもろのテイストを引き出すのに適している。
ただ、小澤自体の存在感は薄まってしまった。

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